現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 2シーズン目が始まる「フォーミュラ・ジムカーナ」! 「大学の自動車部対抗競技」をなぜ大企業が支援するのか?

ここから本文です

2シーズン目が始まる「フォーミュラ・ジムカーナ」! 「大学の自動車部対抗競技」をなぜ大企業が支援するのか?

掲載 3
2シーズン目が始まる「フォーミュラ・ジムカーナ」! 「大学の自動車部対抗競技」をなぜ大企業が支援するのか?

 この記事をまとめると

■大学の自動車部が参戦するワンメイクのジムカーナ競技「フォーミュラ・ジムカーナ」が2024年シーズンの開催を発表

初代チャンピオンに輝いたのは「中央大学」自動車部! 熱戦が繰り広げられた「フォーミュラジムカーナ2023」が奥伊吹の決勝戦でフィナーレ

■車両などが貸与される完全イコールコンディションで闘う競技

■学生と社会人の枠を超えたクルマ好きの交流の場としての価値があると、事務局長の岩田氏は語る

 キーパーソンたちが語るフォーミュラ・ジムカーナ2年目の進化とは

 車両性能ではなく、チームワークと純粋なドライビングスキルを競う大学生の自動車競技として、昨年発足したフォーミュラ・ジムカーナ。2年目を迎える2024年の年間スケジュールが発表された。

 予選会1:5月4日(土)~5日(日) 鈴鹿ツインサーキット 予選会2:6月29日(土)~30日(日) エビスサーキット西コース 予選会3:8月10日(土)~11日(日) TSタカタサーキット 全国大会:9月21日(土)~22日(日) 奥伊吹モーターパーク

 2023年度はEASTとWESTのブロックごとに事前招待による各10校、つまり計20校が予選を戦い、各上位5校が9月の全国大会に歩を進め、10校で決勝を争うという流れだった。だが2024年シーズンは、機会均等とイコールコンデションを掲げる競技であるがゆえ、参加校を30校に増やした。参加希望校は事前にエントリーシートを提出し、書類審査と選考によって決定された。

 運営を担当するモータースポーツコム(以下MSC)代表で、フォーミュラ・ジムカーナ事務局長の岩田和彦氏は、運営として2年目の進化、取り組みを次のように述べる。

「どうしてフォーミュラ・ジムカーナに出たいのか、エントリーの動機をまずは説明してもらって、どんな学校に出場してもらうか。参加する学生たちから何を引き出せるか、そこを見きわめること自体が、我々にとっても課題です」。

 ヴィッツGRMNを競技車両とし、10台とスペア1台の体制は昨年のまま。練習から決勝まで、イコールコンディションを徹底する点は変わりない。

「土日開催で、宿泊や食事も大会側が1泊2日分を負担します。徹夜早朝といったコンディションで無理して学生が走ってくるといったことがないよう、安全を担保するために集合時間も8時~8時30分にします。競技自体は3人一組の合計タイムを競い、予選2本を走って2本のうち早い方を採るので、個人戦で誰が速かったか、ではありません。また、今シーズンからは新しいテイストを採り入れて、完全停止をコース途中に設けたり、フィニッシュラインを越えてこのゾーンで止まる、といったことも行います。給油についても、こちらで満タンにしたらそれ以降の増減は許されません。使えるタイヤも練習から決勝まで1セットのみ。逆に、練習で使わないで温存するといった戦略もありうるでしょう。いずれ、どうやったら勝てるか、自分たちで考えてほしいということです」。

 岩田氏は、「自動車部の学生は自動車業界にとって未来の宝、人財である」と指摘する。そもそも、フォーミュラ・ジムカーナの実質的な発案者であるTOYOTA GR GAZOO Racingの20代中盤~30代半ばのスタッフたちも、学生時代は自動車部に所属していたからこそ、大学生ならではのモータースポーツの枠組みの必要性を感じている。当時をふり返り、トヨタGR企画部モータースポーツ推進室の田中美希氏はこう述べる。

「基本的に競技で使うクルマはボロボロで、整備にお金もかかるし時間もかかるから、バイトで忙しいとか練習ができないとか、やりくりが大変でしたね。成績を出せる方はやはり裕福なバックグラウンドがある人や学校というところで……」。

 異口同音に言葉を継ぎつつ、トヨタGAZOO Racing Company BR GT事業室 主任の宮内貴史氏は、学生としてモータースポーツに打ち込む難しさを折々で意識させられたという。

「競技車両についてはお金がどうしても大きいウェイトを占めます。環境面でも、交通費や宿泊費がまわせなくて、徹夜で移動して遠征費を削るとか。若いから無理しちゃうんですけど危ないですよね。競うために少しでも練習したいから、予算を食費よりも練習にまわそうとか。やはり目立つ方々って背景が少し違っていて、学生の間にクルマの競技を頑張りました、とアピールできる機会が平等ではないんです。ですから、お金や人脈ではない、頑張りをアピールできる舞台を整えるべきじゃないかと」。

 イコールコンディションで大学自動車部によるジムカーナ、という大枠を最初に思いついたトヨタGR車両開発部GRZの石井宏尚氏は、その意義を次のように語る。

「企画のベースは、自分が大学生の時代にこういうのがあったらいいな、ということ。ゴルフ部もお金がかかるイメージですけど、自動車部とは違って税金は要らないですし(苦笑)。学生自動車連盟や学生だけの大会はありますが、道具にお金がかかる負担を減らす方法がないか、ずっと考えていました。たまたま自分がTGRにいることで、社内の協力もあって車両を用意することができました。当初は思いもよらなかったことですが、550万人の業界に貢献できる大会にできたらいいな、と考えています」。

 運営の側から、そして運営を超えた立場から、岩田氏はこうも付け加える。

「やはり自動車部の学生って自動車業界にとって未来の宝じゃないですか。競技に取り組みながら、どう楽しむか。車両やパーツを提供してくれるサポート企業の方々と、スーツやネクタイを着ての説明会とは違った、壁のない交流が図れたら、と考えています。企業と学生が一緒に同じ釜の飯を食うことで、新しい発見がある気がするんです。運営する側としては、クルマというテーマで人と人の環が形成され、参加する学生も協賛する企業も、皆が幸せになれる、メリットやリターンのある大会にしていきたいですね」

 1年目の開催を経て見えてきたフォーミュラ・ジムカーナの意義

 では、フォーミュラ・ジムカーナは、競技を通じて自動車関連企業の、新たなリクルートの場になろうとしているのか? TGRの宮内氏が、説明する。

「もしかすると、『タダで競技に出られて、いい場を提供してもらって、ありがとうございました』で終わってしまう関係もあるかもしれません。でも10年、15年後の自分たちの仲間がいるかいないか、それは見極めたい。5年後、10年後の自動車業界に自分の力が要るんだと、気づいてくれる学生もいるかもしれません。どう取り組んだらいいか、競技に挑むなかで考え方や問題解決の質が上がっていく、そんな育成の意味合いもあるかもしれません。自動車が好きで熱い気持ちはあっても、他の業界に進む学生もいるかもしれませんが、できれば仲間になって、盛り上げるこちら側に来て、中心メンバーになって欲しいところです。すべて『かもしれません』なのは、自発的にそうなってくれるかどうかは学生ひとりひとり次第ですから」。

 いまのところ、車両提供はヴィッツGRMNのみで、トヨタによるワンメイク大会かつ人材発掘の場のようにも見えかねないが、決してそうではない。トヨタGAZOO Racing Companyは旗振り役ではあったが、完成車メーカーの協賛企業には日産とマツダも名を連ね、それぞれのメーカーからFFでない駆動方式の車両提供も鋭意検討中だ。また、すでに協賛しているサプライヤやパーツメーカー以外からも、多くのオファーが寄せられている。

 エントリーは大学の公認団体であることが条件とはいえ、学生向けのフォーミュラという特殊な枠組みだからこそ、田中氏は企画自体を一緒に考えたいと述べる。

「どんなことをしたいのか? こういうことをやったらいいんじゃないか? 運営にも主体的に、一緒に実現するにはどうしたらいいか、どう周囲を巻き込んで盛り上げていけるかを考えて実行できるよう、関わってきてほしいですね」。

 昨年のプレシーズンからも、社内外でさまざまな反響があったことを、石井氏と宮内氏は次のように捉えている。

「ほかのレースで協賛いただいているサプライヤー企業さんからも、興味を寄せていただいています。社内でも反響は大きく、就職イベントなどタッチポイントは各部署それぞれありますけど、自動車メーカーとして求める層に近いことは確かだろう、と。一般イベントとしてショッピングモールなどで車両展示をしたりするのとは、また異なるアプローチです。スポーツカーを展示すると、それこそ隅々まで舐めるように見てくれたりするので(笑)。もってきてよかったなぁ、と思いました」。

 プレシーズンの反響をふり返りながら、岩田氏は運営の意義を、次のように締め括る。

「やはり真剣に競技に取り組む以上、失敗して悔しくて涙を流している学生もいました。感情が表に出るほど打ち込んでいる、そのリアルな姿が会場で見られたことを評価したいです。やらされている競技なら、無感情のはずですから。仲間と、失敗したらごめん、成功したらやった、という感情を分かち合う姿は、打ち込んでいる証拠ですよね。真剣にプレーして、新しく得た発見や経験を、大人なり企業なりに言葉で伝え、クルマ好きをベースにした輪は、クルマの話題で盛り上がれるもの。そこに未来の希望があると感じました。フォーミュラ・ジムカーナで知り合った学生たちが、違うイベントの手伝いに来てくれるんですよ。そこには何かしら、気もちがあると思います。ここに来る人たちは世代を超えてレース好きで、携わっている人ですから」。

 予選会や全国大会では一般観客の入場も受け入れるため、箱根駅伝での沿道の声援ではないが、観客も楽しめる学生スポーツの新しいカタチとして、昨年以上の盛り上がりに期待がかかる。

こんな記事も読まれています

2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
WEB CARTOP
フォーミュラ・ジムカーナ・ドリフトからラリーに挑む! モリゾウチャレンジカップに集結する若き才能たち
フォーミュラ・ジムカーナ・ドリフトからラリーに挑む! モリゾウチャレンジカップに集結する若き才能たち
WEB CARTOP
東北学院大学自動車部の強さの秘密とは?「東北660耐久レース」に参戦し続ける秘訣は先輩・仲間に恵まれているからでした
東北学院大学自動車部の強さの秘密とは?「東北660耐久レース」に参戦し続ける秘訣は先輩・仲間に恵まれているからでした
Auto Messe Web
「輸入車は維持費が高いからなぁ……」って噂は本当? 実際の金額を国産車と輸入車で比較シミュレーションしてみた!
「輸入車は維持費が高いからなぁ……」って噂は本当? 実際の金額を国産車と輸入車で比較シミュレーションしてみた!
WEB CARTOP
自動車レースはゴルフのように男女別にすべきか。“変革期”の今だからこそ聞く、女性モータースポーツ界の目的地
自動車レースはゴルフのように男女別にすべきか。“変革期”の今だからこそ聞く、女性モータースポーツ界の目的地
motorsport.com 日本版
ハイパーカーデビューから1年で初優勝「JOTAの成長と努力にふさわしい」とスティーブンス/WECスパ
ハイパーカーデビューから1年で初優勝「JOTAの成長と努力にふさわしい」とスティーブンス/WECスパ
AUTOSPORT web
中古価格80万円以上! 車検もあるし服装も規定あり! イギリスで開催される子どものペダルカーレースがガチすぎて笑う
中古価格80万円以上! 車検もあるし服装も規定あり! イギリスで開催される子どものペダルカーレースがガチすぎて笑う
WEB CARTOP
au TOMSはどうしてそんなに強いのか? GT500最大の疑問に迫る。鍵となるのは“積み重ね”……そこに「悟空とベジータ」が応える最強布陣
au TOMSはどうしてそんなに強いのか? GT500最大の疑問に迫る。鍵となるのは“積み重ね”……そこに「悟空とベジータ」が応える最強布陣
motorsport.com 日本版
県ごとにわかれていたディーラーが同一経営に! ホンダが直資系販売店を統合する狙いとは?
県ごとにわかれていたディーラーが同一経営に! ホンダが直資系販売店を統合する狙いとは?
WEB CARTOP
【試乗】オールシーズンタイヤってどんな感じ? 初体験でウエットも雪道も走ってみたらかなり「アリ」な選択だった
【試乗】オールシーズンタイヤってどんな感じ? 初体験でウエットも雪道も走ってみたらかなり「アリ」な選択だった
WEB CARTOP
福岡で外国語での二種免許試験が可能に! ドライバー不足解決の手段とはいえ免許取得が容易になると交通環境の悪化の危険性もある!!
福岡で外国語での二種免許試験が可能に! ドライバー不足解決の手段とはいえ免許取得が容易になると交通環境の悪化の危険性もある!!
WEB CARTOP
「NSX-GTよりもストレートは速い」 スーパーGTに新規参戦するシビックタイプR-GTの開発陣&ドライバーを直撃した
「NSX-GTよりもストレートは速い」 スーパーGTに新規参戦するシビックタイプR-GTの開発陣&ドライバーを直撃した
WEB CARTOP
わずかなエアロの違いでこんなに変わる? しなるホイールで走りがここまで違う!? 「Modulo30周年」試乗会で感じたホンダアクセスの衝撃の実力!!
わずかなエアロの違いでこんなに変わる? しなるホイールで走りがここまで違う!? 「Modulo30周年」試乗会で感じたホンダアクセスの衝撃の実力!!
WEB CARTOP
“GTの原点”に立ち返る新たな挑戦。市販車モノコック製Z GT300をデビューさせたゲイナーが奮闘の先に見据えるものとは
“GTの原点”に立ち返る新たな挑戦。市販車モノコック製Z GT300をデビューさせたゲイナーが奮闘の先に見据えるものとは
motorsport.com 日本版
極端なEV普及の目標は次々と修正! それでも国産メーカーのEVラインアップを増やすべき理由
極端なEV普及の目標は次々と修正! それでも国産メーカーのEVラインアップを増やすべき理由
WEB CARTOP
いま大型トラックは小径タイヤが人気! どんどん大径化する乗用車とは真逆のトレンドなワケ?
いま大型トラックは小径タイヤが人気! どんどん大径化する乗用車とは真逆のトレンドなワケ?
WEB CARTOP
フォーミュラEが東京にやって来た!日本初開催の本格市街地レースがもたらしたもの
フォーミュラEが東京にやって来た!日本初開催の本格市街地レースがもたらしたもの
グーネット
20代いすゞ「ピアッツァ」オーナーらの呼びかけで「U35」オーナーの愛車105台が集合!「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」とは
20代いすゞ「ピアッツァ」オーナーらの呼びかけで「U35」オーナーの愛車105台が集合!「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」とは
Auto Messe Web

みんなのコメント

3件
  • 葛葉恭次
    なぜ=早いうちから“好きを仕事に”と錯誤した社畜の確保の為
  • ヨゴロウザ
    タダで参加させているのだから違うといってもやはり人材確保、広告、企業イメージの植付などの商業的な側面は大きいですよね。学生は資金がない所をアイデアでカバーするのが面白かったはずなのに至れり尽くせりじゃ、つまらない人間しか育たなそうなイメージ。ドライバーを育成してるというなら話は別ですがね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

118.2194.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

10.0355.0万円

中古車を検索
ヴィッツの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

118.2194.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

10.0355.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村